日本定位放射線治療学会

定位放射線治療について

定位放射線治療は、特殊な装置を用いて患者さんの位置を決め、小病巣に対し多方向から放射線を正確に集中投与する放射線治療法の総称です。通過する周囲組織への被曝を最小限に抑えつつ、放射が集中する病巣には高線量を照射することが出来るという特徴があります。定位放射線治療の中でも、1回ないしは少数分割照射で終わる場合を定位放射線外科治療と呼びます。以下に定位放射線治療の基本的な情報を説明します。

目的

主として腫瘍や血管奇形に対する治療目的に用いられます。放射線は腫瘍細胞の遺伝情報であるDNAの二重らせん構造にダメージを与えることで、腫瘍細胞の成長を遅らせたり、死に至らしめたりするほか、異常血管を閉塞させる効果が期待できます。

装置

一般的に、定位放射線治療に用いられる照射装置は、標的病巣の位置と形状に合わせて放射線を照射することができます。以下に代表的なものをいくつか挙げます。

直線加速器(Linear Accelerator, LINAC)

放射線治療で最も一般的に使用される装置で、電子を加速させ、高エネルギーの放射線(X線)を生成する装置の通称です。定位放射線治療では、三次元原体照射(3D-CRT:3次元画像情報を利用し、腫瘍形態に合わせた照射を行う)、強度変調放射線治療(IMRT:3D-CRTの発展形で各照射ビームの線束強度の変調とコンピュータ最適化技術を用いて、より腫瘍形状に合わせた照射が可能)、強度変調回転放射線治療(VMAT:回転型IMRTで照射時間が大幅に短縮され、体動の影響を軽減させた治療が行える)などの照射技法が用いられます。体幹部の腫瘍に対する体幹部定位照射(SBRT)も実施可能です。超小型のリニアックをロボットアームに搭載したサイバーナイフ(CyberKnife®)や自己シールド型のジャイロ機構に搭載したZAP-X®といった特殊装置もあります。

ガンマナイフ(Leksell Gamma Knife®)

主として頭蓋内の腫瘍や脳の疾患の治療に使用される装置です。強固なフレームによる頭部固定と、治療装置に内蔵された約200個のコバルト60からなる放射線源の特性から、周囲への被曝を極力低減させた高精度な放射線治療を行うことができます。低侵襲的であり、開頭手術に伴うリスクの回避や回復期間の短縮に繋がります。単回照射を得意としますが、近年の進歩によりフレームレスガンマナイフによる少分割照射も行えるようになりました。

これらは代表的な定位放射線治療装ですが、技術の進歩により新しい装置の開発や既存装置の改良が行われ続けています。

対象疾患

頭蓋内や体幹部における、さまざまな腫瘍や血管奇形、機能性疾患(三叉神経痛など)の治療に使用されます。単独のみならず、手術や化学療法と併用して使用されることがあります。また、腫瘍が広がって他の部位に転移しているような治癒困難な状況においても、症状の緩和や転移の制御に役立つことがあります。治療の性質上、治療可能な腫瘍の大きさに上限があります。一般的には、定位手術的照射では長径3 cm、少分割の定位放射線治療では5 cmが安全に治療可能な上限サイズの目安です。

治療手順

定位放射線治療の手順は、治療装置、疾患の種類、個々の患者さんの状況によって異なります。一般的には、患者さんの医用画像をもとに放射線治療計画を作成し、照射範囲や照射量、照射分割回数(単回もしくは複数回)を決定します。治療の際には体動の影響を防ぐべく、何らかの固定方法を併用します。以下に詳細な手順を説明します。

事前評価

治療計画のための詳細な画像検査が行われます。MRI(磁気共鳴イメージング)やCTスキャン(コンピュータ断層撮影)、血管撮影などの画像技術を使用して、病変の形状と位置を明確に把握します。

治療計画

画像検査の結果をもとに、放射線治療チームによって最適な治療計画を作成します。治療計画では、照射すべき位置や照射量、照射回数などが決定されます。また、周囲の健康な組織を最小限に保護するために、照射を受けるべき範囲が慎重に選ばれます。

定位放射線治療の実施

患者さんは通常、照射装置に仰向けの姿勢で横になり、治療装置に患部を固定した上で、正確な照射が行われます。一回の治療時間は十数分〜3時間程度となります。

副作用

定位放射線治療には、一時的な副作用が発生することがあります。例えば、皮膚の赤みや痛み、疲労感、吐き気、食欲不振などが報告されています。

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